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【徹底解説】FP3級 きんざいとFP協会、どっちが良いの?実技試験を比較

この記事では、FP3級試験はきんざいとFP協会、どちらで受ければ良いのかを、実技試験の比較を中心に解説しています。


FP3級試験は、「きんざい」と「FP協会」という、2つの団体が試験を行っています

どちらの団体で試験を受けても、取得できる資格は国家資格のFP3級(3級ファイナンシャル・プランニング技能士)です


じゃあどっちも同じで、えんぴつ転がして受ける団体決めちゃっても良いのかというと、ちょっとだけ思いとどまってほしいです。

ただ、難易度などにすごい大きな違いがあるわけでもないので、この記事を読んだ後もえんぴつ転がしたいと思ったら、それは全然良いと思います。


※「きんざい」と「FP協会」という略称を使いますが、それぞれの正式名称は以下の通りです。
 きんざい=一般社団法人金融財政事情研究会
 FP協会 =特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会

結論とフローチャート

FP3級の実技試験はどっちが良いか


最後のまとめにも載せていますが、きんざいとFP協会どっちを選べば良いかは、結論としては上記のような形になります。

実技試験がFP協会のほうが簡単で合格率が高いので、基本的にはFP協会がオススメです。

ただ、きんざいのほうがいろんな地域に試験会場があります。
きんざいの実技試験もそんな差があるほど難しいわけじゃないし、もしきんざいのほうが受験地が近くて便利なら、きんざいでいいと思います。

もちろん保険関係・保険業界志望の人はきんざいの保険顧客一択だと思います。





きんざいとFP協会

2002年にFP技能士が国家資格として認定されてから、ずっと試験の実施団体は「きんざい」だけでした。
それが2011年1月の試験から、「日本FP協会」もFP試験を実施していくようになりました。


ですから、FP試験の実施団体としての歴史は、「きんざい」のほうが長いです。
(団体自体もきんざいは1950年設立、FP協会は1987年ときんざいのほうが長いです)


そのためなのか、受験者数はきんざいのほうが多いです。
ただ、近年は受験者数の差が縮んできています
その辺の数字は、当記事の下もう少し後に詳しく書いています。



というか国家資格試験の実施団体が2つあるってすごい珍しいですよね。ほかにそんな試験あるのかな?


※調べてみたところ、こういうのを「指定試験機関制度」っていうらしくて、厚生労働省が管轄する国家資格特有のものみたいです。厚労省のサイトにいろんな資格の指定機関一覧がありましたが、今のところ2つ以上の団体が同一試験を実施しているのはこのFP試験だけみたいです。
参考:指定試験機関制度について(厚生労働省のサイト)





きんざいとFP協会の違いまとめ

違うところと同じところをそれぞれ細かく解説します。

FP3級 きんざいとFP協会の違いまとめ


違うところ:実技試験の内容と試験会場が主な違い

実技試験の内容
試験会場
③受験申し込み先、受験をネットで申し込むときのサイト



・解説
実技試験の内容
一番大きい違いで、どちらで試験を受けるか判断するのに最大の要因となるのが、「実技試験の内容が違う」ことです。


実技試験がどう違うのかがこの記事のメインの内容なので、それは詳しく後述します。



試験会場
受験先を決める前に
試験会場も必ず両サイトで見比べてほしいです
どちらも47都道府県すべてで実施していますが、試験会場の数は結構差があります


FP協会は2019年9月の試験で、98の試験会場がありました。
一方、きんざいは130地区にそれぞれ必要な数の会場を設けるため、実際は130以上の試験会場があります。



・参考

FP協会の2019年9月の試験会場(日本FP協会のサイト)
きんざいの2019年度の受験地コード(きんざいのサイト)

※きんざいのサイトには受験地コードとは別に過去の試験会場も掲載されていますが、これは1回の試験で使った会場ではないと思います。数えてみたら全部で324会場ありました。
2019年9月の試験で、きんざいはFP協会の約1.4倍の受験者数がいますが、324会場あったら会場数は3.3倍ということになります。さすがにそれはないでしょう。



例えば、北海道でFP試験を受けようと思った場合、FP協会で受けるなら函館、札幌、釧路の3地区です。
一方、きんざいだと札幌、旭川、釧路、函館、室蘭、苫小牧、帯広、北見の8地区に会場があるため、FP協会より地理的に受けやすい人も多いと思います。


北海道は極端な例ですが、各都道府県でもきんざいのほうがアクセスしやすくなる人は多いと思います。



実技試験の違いはありますが、難易度はそんなに変わりませんし、住んでいる地域によってはこの試験会場を基準にどちらで受けるか判断しても良いと思います。




③受験申し込み先、受験をネットで申し込むときのサイト
これは当たり前ですが、実施団体が違う以上、申し込みはそれぞれ別です。


郵送なら受験したい団体の住所に送る必要があります。
ネットで申し込む場合も、受験したい団体のサイトから申し込む必要があります。




同じところ:学科試験は同じ内容

①取得できる資格…どちらで受かっても、国家資格である「3級ファイナンシャル・プランニング技能士」が取得できます。

学科試験の内容…実技試験はどちらを受験するかで異なりますが、学科試験はどちらでも同じ試験内容です。


③日程………試験申し込み期間や試験日や試験時間など、すべて同じです。


④受験料……どちらも6,000円(学科・実技 各3,000円)。


⑤受験資格…どちらも受験資格は特にありません。


⑥試験免除基準…どちらでも免除があります(学科(実技)だけ受かった場合は次の試験で学科(実技)は免除される、みたいなやつです)。


その他

・例えば、「5月の試験はきんざいで受けて、学科は受かったけど実技は落ちた。次の9月の試験で実技だけFP協会で受験する」みたいに実施団体を学科・実技で分ける
 できます

FP3級試験はきんざいで受かって、FP2級試験はFP協会を受験する

 →できます

※どちらも受ける団体が逆でもできます


https://shikatori.com/fp3-overview





実技試験の出題形式や範囲など

実技試験は、以下の3つからあらかじめどれか1つを選択して受けます。

個人資産相談業務
  →きんざい
保険顧客資産相談業務→きんざい
資産設計提案業務  →FP協会

きんざいの実技試験:事例が5つ×3問=15問

個人資産でも保険顧客でも、事例が5つ出されて、各事例に3問ずつ問題、計15問の出題がされます。

出題傾向ははっきりしています。

毎回大問構成は以下の順番になっています。

FP3級 きんざいの実技試験の内容



どの事例でもAさんが登場して、毎回Aさんの家庭環境やお財布事情が包み隠さず晒されます。
Aさんをイメージしながら解くといいかもしれません。


合格点は50点満点中30点、60%の正解で合格です。
配点は公表されていませんが、事例5つに各10点の配点をしていると思います。


FP協会の実技試験:大問7つ、問題数は20問

FP協会の場合は資産設計一択になります。
出題形式はきんざいとは結構違っていて、大問が7つあって、小問は20問あります。


合格点は100点満点中60点、きんざいと同じく60%の正解で合格です。
配点は小問1つにつき各5点じゃないかと思います(こっちも推測)。

大問の構成には以下のような明確な出題傾向があります。

FP3級 FP協会の実技試験の内容

※私的保険とは…国民健康保険のような公的保険ではなく、各自で加入する生命保険や損害保険などのことです。


大問7.複合相談問題は複数範囲から出題

大問7の複合相談問題(勝手に名付けました)は、きんざいのように1つの事例で何問も出題される形式です。
毎回ファイナンシャル・プランナーが〇〇さんの相談を受けて、〇〇さんの家族構成や財産内容を考慮しながら小問に答えていく感じです。


きんざいと違うのは、きんざいの場合1つの事例で1つの分野、例えば大問3の事例では税金に関する小問だけが3つ出題されるような形式です。
一方、この複合問題は1つの事例で社会保険と金融資産と税金、というように複数の範囲から出題されます。


大問に社会保険がない分、この大問7で2~3問出題されます。



大問内の問題数は毎回若干ばらつきがあります。
2019年1月、5月、9月の試験は以下のような構成でした。

FP3級 FP協会の実技試験の傾向


きんざいとFP協会の文章量:きんざいの個人資産が有利

結構問題の雰囲気が違うので、もしかして文字数にすごい差があったりする?

ってことで、きんざいの「個人資産」「保険顧客」と、FP協会の「資産設計」の文字数を比較してみます。

FP3級 実技試験の問題数


個人資産(きんざい)と資産設計(FP協会)には毎回700~800文字程度の差がありますね。

「1文字でも多くの文字は読みたくないんだ!」って方には個人資産をおすすめしますが、それ以外の方にとってはそんなに大きな差ではないと思います。


保険顧客は結構ばらつきがありますが、個人資産と資産設計は毎回似たような文字量…よくこんな毎回似たような量に留められるな。


※過去問のPDFをワードにコピペして文字数を計っただけなので、誤差があると思います。
※PDF内の文字数すべてをカウントしているので、実際の文字数はもう少し少ないです。きんざいのPDFは表紙がついていましたが、その分は除いています。


実技試験の出題範囲:きんざいのほうが狭い

実技試験の出題範囲は、学科試験とほぼ同じです。
※学科試験の出題範囲は、簡単にいえば、①社会保険、②私的保険、③資産運用、④税金、⑤不動産、⑥相続の6つです。


ただ、それぞれ若干差があります。

FP3級 きんざいとFP協会の実技試験の出題範囲


保険顧客(きんざい)では私的保険が大問2つ分あります。
じゃあ出題範囲の狭い保険顧客が良いのかっていうと、そういうわけではないです。


私的保険で大問2つ使っているだけあって、そこで結構マニアックな問題が出てきます

その難しさは後述の合格率の差にも表れていると思います。


FPの法順守とキャッシュ・フロー表は資産設計(FP協会)でだけ毎回小問1・2で出題されます。
ただこれはめちゃくちゃ簡単です。サービス問題みたいなもんです。
CF表って聞くと専門的に聞こえますが、実際の問題は足し算引き算ですから…。



FP試験の過去問は無料で公開されてます

きんざいとFP協会のサイトでは、過去問が3、4年分公開されています。

実際の問題を見たい方は、下記のリンクから確認してみてください。

きんざいの過去問(きんざいのサイト)
FP協会の過去問(FP協会のサイト)





合格率と受験者数で実技試験を比較

今度は、きんざいの個人資産・保険顧客と、FP協会の資産設計を
「受験者数」と「合格率」で比べていきます。

実技試験の受験者数の推移:FP協会が右肩上がりで逆転

FP3級 きんざいとFP協会の実技試験の受験者数の推移

これまではずっときんざいの「個人資産」が受験者数では圧倒的でした。
それがだんだんとFP協会の「資産設計」が増えてきて、2016年5月の試験を境に逆転しました。


これまでは試験団体としての実績が長いきんざいを受ける人が多かったのが、
だんだんと多くの人が合格率の差に気付いたのか、今では逆に圧倒的な差が生まれています。



あと検索順位も大きいかもしれません。「FP3級」と調べると、1位にFP協会、2位にフォーサイト(通信講座会社)、3位にきんざいという順です。

FP試験の仕組みを知らない人からしたら、とりあえず1位のサイトに行って、受験申し込みしてるんだからFP協会で申し込めば良いんだろうと思いますよね。

まさかFPには2つの試験団体があって、試験内容とか試験会場に違いがあるとは思うまい…。



この受験者数の傾向はしばらく続くのかもしれません。
理由は合格率を見てみると分かります。


ちなみに、「保険顧客」に関しては、1万~1.5万の範囲で安定しています。
これは保険会社の人やそういう仕事を目指している人にとっては、保険顧客一択だからだと思います。

FP3級 きんざいとFP協会の実技試験の受験者数の表

※各試験の最大値を赤、最小値を青にしています。


実技試験の合格率の推移:FP協会がかなり高い

FP3級 きんざいとFP協会の実技試験の合格率の推移

・平均合格率
 資産設計(FP協会)…86.1%
 個人資産(きんざい)…64.0%
 保険顧客(きんざい)…51.8%


FP協会の「資産設計」が安定してかなり高いです。
そりゃあこれを知ったらFP協会で受けたくなるでしょう。



FP協会のほうが簡単だから、合格率が高い

なんでこんな差が出るのかというと、やはり試験問題の内容によるものだと思います。

きんざいの実技試験は、各問題がちゃんと知識がないと解けないようになっています。



FP協会の実技試験は、正直知識がなくても解ける問題がたくさんあります

表から必要な情報を読み取って、簡単な計算をする問題とか、学科試験の勉強で基礎中の基礎さえ押さえておけば解ける問題とか。

そりゃあこのぐらいの合格率にもなる…っていう問題です。

FP3級 きんざいとFP協会の実技試験の合格率の表

※各試験の最大値を赤、最小値を青にしています。


ただ、学科試験の合格率にも差がある

学科試験はきんざいでもFP協会でも共通の内容です。

それなのに、両団体の学科試験の合格率には明確な差があります。

FP3級 きんざいとFP協会の学科試験の合格率
FP3級 きんざいとFP協会の学科試験の合格率の表

※各試験の最大値を赤、最小値を青にしています。


・合格率の平均
 FP協会 …76.6%
 きんざい …61.2%
 合格率の差の平均…15.4%


誤差とは思えない、明確な差があります。
1回僅差で合格率が逆転することがありましたが、それ以外では毎回FP協会の合格率が上回っています。



受験者の学力レベルも違うかも

なんで同じ試験内容なのに、こんなに差が生まれるのか…

考えられるのは、受験者の学力レベルの差だと思います。

きんざいは昔から試験実施団体だから、会社や学校が団体で申し込むのはきんざいなのかもしれません。
団体で申し込んだら、中には受けたくないのに仕方なく受ける人も一定数いると思います。


その場合、やる気なんて起きないでしょうから、勉強せずに体裁上試験だけ受けて帰る、みたいなことが結構あるのかもしれません。


いやーでもそれだけでこんなに差が生まれるものなのか…?


学科合格率を加味した実技合格率(参考)

仮にこの差はやる気ない人だとすると、ちゃんと勉強した人だけ抽出したらその分きんざいの合格率は上がります。

※そんな抽出したらFP協会も上がるだろうし計算が少しおかしいと思いますが、あくまでイメージということで…


※気になったので計算しましたが、あまり意味のないデータです。

FP3級 調整後の実技試験の合格率
FP3級 調整後の実技試験の合格率の表

※各試験の最大値を赤、最小値を青にしています。
※きんざいのほうの合格率にFP協会ときんざいの学科試験の合格率の差を加算しています。



・平均合格率
 資産設計(FP協会)…86.1%
 個人資産(きんざい) …79.4%
 保険顧客(きんざい) …67.2%


だいぶ差がなくなりました。
うーんでも資産設計と個人資産の難易度の差はもっとあると思います。





まとめ(実技選択フローチャートあり)

保険関係の人、そっち志望の人
 →保険顧客→きんざいで受験

受験地がきんざいのほうが近い

 →個人資産→きんざいで受験

・とにかく少しでも受かる確率を上げたい
 →FP協会で受験

・受験地はどちらでも大丈夫
 →FP協会で受験

FP3級 きんざいとFP協会のどちらを選ぶべきかのフローチャート



まず、保険関係の人や保険業界志望の人は保険顧客で取るのが良いと思います。

逆にそれ以外の人には、①内容の難しさ、②テキストの対応具合からして、保険顧客はおすすめできません。

したがって、受験地を理由にきんざいを受ける場合は、個人資産で受験するのをおすすめします。


※受験地は以下の両団体のサイトを参考にしてください。
 
FP協会の2019年9月の試験会場(日本FP協会のサイト)
 きんざいの2019年度の受験地コード(きんざいのサイト)

 きんざいの過去の試験会場 (きんざいのサイト)


資産設計(FP協会)の内容はかなり簡単です。
ただ、じゃあ個人資産(きんざい)は難しいかというとそれはないです。


個人資産でも学科受かる程度の勉強をして、あとは過去問とかで実技の問題に慣れれば、
それ以上は実技特有の勉強をする必要はないと思います。


個人資産もそれで十分受かるような難易度です。


だから受験地がきんざいのほうが近ければ、きんざいの個人資産でいいんじゃないかと思います。



では保険関係の人でもなければ、受験地もFP協会で問題ない人は、FP協会一択だと思います。
どちらで合格しても取得できる資格は同じ3級FP技能士なわけで、
それならより簡単なFP協会にするのは当然だと思います。


 

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